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『MERI』と名のついたメリヤス製のルームシューズ。ポップな色合いで思わず手に取りたくなる。北欧をイメージさせるこの可愛い室内履きは、小高莫大小(コダカメリヤス)工業株式会社のオリジナル商品だ。
全国のデパート催事場に出店しては、各地で評判をよんでいる。
商品と共にそっと置かれたディスプレーには、MERIを作っている職人さんの映像が映し出されていた。それは青森の雪景色の中で、作業をするひたむきな姿。MERIに詰った想いが伝わってくる。
これは小高社長が制作した映像である。

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「メリヤス編みで作るポロシャツの衿とか袖口とか裾とか、ニット製品に使うパーツを作っている会社です。」と自社を語るのは、代表取締役社長の小高集さん。創業六十余年、今は数少なくなってしまったニット・リブを専門に作り続ける会社の三代目だ。
祖父が冬のスキー用ニット帽から創業、先代の父親が春夏の仕事としてポロシャツの衿をつくり始めた。そしてまた今、小高社長により新しい価値観のモノづくりが始まっている。

 

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古くなった布やハギレを裂いて編み、布草履にするのは古くからある知恵だ。
ある日、青森で布草履を作っている職人さんから一本の連絡が入った。
それは時代とともに縫製工場が少なくなった為に、材料となる布を仕入れるのが困難になってしまったので、ハギレを譲って欲しいという相談の電話だった。

 

「ネットショップとかでハギレをプレゼントしたりしていたので、多分検索で引っかかったんでしょうね。それで連絡が来てハギレありませんか?って言われて。うちもそんなに多くハギレが出る訳ではないんです。でも困っているみたいだから、同業や仲間に聞いてかき集めて取りあえず送ったんですよ。」

 

しばらくして青森から出来上がった布草履が、御礼にと一足届いたそうだ。
「普段スリッパとか履かないし、はじめ全然興味なくって。それでも貰ったから履いてみたら、凄く気持ち良くて。あ~これいいわぁって。何とかこれでオリジナル商品作れないかなって思ったんです。

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」それはちょうど、自社のオリジナル商品開発に苦戦をしていた時期だった。
「出会いなんですよね。」小高社長は嬉しそうに語る。

 

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青森の職人さんの協力を得てオリジナルの商品開発に取りかかる事となったが、すぐに頭を悩ます事になる。それは、布草履の材料であるハギレが不足しているという問題が、解決していなかったからだ。
小高莫大小工業では、自社工場でニット製品のパーツを糸から編んでいる。そんな時に、ふと思った。
「ハギレはないけど糸は沢山ある。だったら最初から編んじゃえばいいじゃんって。例えばポロシャツの襟ってラインが入ってますよね。ベースの色糸は目一杯使い切るけど、どうしてもラインの色糸は余ってしまう。それを使って紐を編んじゃえばいいんだって。」
もとの固定概念をふり払い、ハギレを裂き紐をつくるのではなく、余った糸から紐を作る事にしたのだ。こうして材料の問題は解決した。試行錯誤のうえ、約一年後、納得の履き心地のオリジナル商品が出来上がった。しかし、それは今まで青森の職人さんが作っていた商品と比べてみても、見栄えに大きな違いがなかった。
「生地が違うんでモノは違いますよ。でもネットショップだと写真でしょ。それに、オリジナルとしてのインパクトがなさ過ぎる。」

 

困っていたところに、ポツンと言った職人のひと言が運命を変えた。
「これ同色の糸だけを集めて編むの面倒くさいよね。ミックスしちゃわない?」
試しに糸を混ぜ合わせて編んでみると、そのとき限りの色合いの、他にはないオリジナル性のあるものが出来上がった。

 

「それで、ようやく青森の商品と全く違うものが出来た。これを『メリヤス草履』として、スタートしたんです。」

 

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こうして世界にひとつだけのメリヤス草履が生まれ、ネットで販売するとあっという間に完売となった。
しかし、メリヤス草履は青森の職人さんたちの手作りだ。毎月作れる数は五十足が限度だった。

 

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数は多くは作れないが、納得の商品が出来あがった。次にこれをビジネスとして続けていくのに必要なものはブランディングだ。価値あるものの良さを最大限に伝える事ができれば、価格の勝負が出来るからだ。
そこで、草履というものから“ルームシューズ”つまりインテリア・リビング雑貨の一部としてインパクトのある商品を目指した。

 

「パンフレットとかロゴとかコンセプトとか。そういう、目に見えないものには全くお金払いたくなかったんですけど。モノづくりやっている人って、みんなそうだと思うんです。ホームページだって、映像だって高いでしょ?でもやるしかないと思ったんです。」

 

そうして出来あがったのが、北欧をイメージした『MERI』だ。カラフルな色合いとモチーフが目を惹く。草履の言葉のイメージからの一新だった。

 

「実はMERIってブランド名、一番はじめに却下したんです。だってメリヤス編からの発想で単純でしょ。でも、“メリヤス”というもう聞かなくなってしまった言葉をどこかに残したいよねということで、やっぱりMERIかなぁって決まったんですよ。」
メリヤスの言葉を残したい気持ち。
それは青森の職人さん達の暮らす、あの美しい雪景色を残したいという気持ちと重なった。

 

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小高社長は、墨田区観光協会が主催し、弊社代表 榎田竜路が主任講師を務める「まち映像プロデューサー」講座の第一期卒業生でもある。全国の講座受講生の中でも、最も精力的に映像発信をしている一人だ。小高社長のYouTubeにアップしている映像作品は、自社・他社の紹介を含めなんと三百を越える。講座で一番学んだこと、それは「伝えるのではなく伝わること。」だという。

 

「上手く伝えるんじゃなくて、伝わるような。何をやっても、その背景には嘘がないから。じわじわじわじわと映像を通して皆さんの心に入っていって、それが一人歩きしているというのが自然かな。いいモノ作りをしている、それは誰にも負けないものですから。」

 

講座では、自社の映像ではなく必ず他社の映像を制作する。それは自身ではなかなか気付けない魅力を引き出すことを学ぶためだ。

 

「人のものを撮ってると、愛情が出てくるじゃないですか。こういうところスゴいなぁって、伝えてあげたいなぁとか。だけど相手はその魅力に全然気付いてない。そのまどろっこしさを、フィルターを通して伝えるというか。それが映像って面白いんです。」

 

小高社長の作った映像は、そこに映る人の人柄が伝わってくる。
「映画学校通った人とかに、映像の技術で言ったら絶対に勝てる訳ないんだもん。でも僕たちができるのは、自分たちがモノづくりをやっている視点でインタビューして、言葉や笑顔を引き出したりだとか、想いを語ってもらえる。自分たちにとっての日常が、外に出ればスゴい事なんだよって伝えられるんです。」

 

展示会場のディスプレー映像に映し出されていたMERIの職人さんの、はにかんだ笑顔と青森の風景を思い出す。
小高莫大小の商品は手にすると、どれも不思議に温かい気持ちになる。
それは、作ってくれる職人さんの愛情。商品への愛情。手にとるお客さまへの愛情がたくさん詰っているからだろう。 
(小高 朋子)

-受け継ぐ技術と新たなる挑戦

『MERI』と名のついたメリヤス製のルームシューズ。ポップな色合いで思わず手に取りたくなる。北欧をイメージさせるこの可愛い室内履きは、小高莫大小(コダカメリヤス)工業株式会社のオリジナル商品だ。

全国のデパート催事場に出店しては、各地で評判をよんでいる。

商品と共にそっと置かれたディスプレーには、MERIを作っている職人さんの映像が映し出されていた。それは青森の雪景色の中で、作業をするひたむきな姿。MERIに詰った想いが伝わってくる。

これは小高社長が制作した映像である。

 

「メリヤス編みで作るポロシャツの衿とか袖口とか裾とか、ニット製品に使うパーツを作っている会社です。」と自社を語るのは、代表取締役社長の小高集さん。創業六十余年、今は数少なくなってしまったニット・リブを専門に作り続ける会社の三代目だ。

祖父が冬のスキー用ニット帽から創業、先代の父親が春夏の仕事としてポロシャツの衿をつくり始めた。そしてまた今、小高社長により新しい価値観のモノづくりが始まっている。

 

-きっかけは遠く離れた青森からの想い

古くなった布やハギレを裂いて編み、布草履にするのは古くからある知恵だ。

ある日、青森で布草履を作っている職人さんから一本の連絡が入った。

それは時代とともに縫製工場が少なくなった為に、材料となる布を仕入れるのが困難になってしまったので、ハギレを譲って欲しいという相談の電話だった。

 

「ネットショップとかでハギレをプレゼントしたりしていたので、多分検索で引っかかったんでしょうね。それで連絡が来てハギレありませんか?って言われて。うちもそんなに多くハギレが出る訳ではないんです。でも困っているみたいだから、同業や仲間に聞いてかき集めて取りあえず送ったんですよ。」

 

しばらくして青森から出来上がった布草履が、御礼にと一足届いたそうだ。

「普段スリッパとか履かないし、はじめ全然興味なくって。それでも貰ったから履いてみたら、凄く気持ち良くて。あ~これいいわぁって。何とかこれでオリジナル商品作れないかなって思ったんです。」それはちょうど、自社のオリジナル商品開発に苦戦をしていた時期だった。

「出会いなんですよね。」小高社長は嬉しそうに語る。

 

-逆転の発想 運命のひと言

青森の職人さんの協力を得てオリジナルの商品開発に取りかかる事となったが、すぐに頭を悩ます事になる。それは、布草履の材料であるハギレが不足しているという問題が、解決していなかったからだ。

小高莫大小工業では、自社工場でニット製品のパーツを糸から編んでいる。そんな時に、ふと思った。

「ハギレはないけど糸は沢山ある。だったら最初から編んじゃえばいいじゃんって。例えばポロシャツの襟ってラインが入ってますよね。ベースの色糸は目一杯使い切るけど、どうしてもラインの色糸は余ってしまう。それを使って紐を編んじゃえばいいんだって。」

もとの固定概念をふり払い、ハギレを裂き紐をつくるのではなく、余った糸から紐を作る事にしたのだ。こうして材料の問題は解決した。試行錯誤のうえ、約一年後、納得の履き心地のオリジナル商品が出来上がった。しかし、それは今まで青森の職人さんが作っていた商品と比べてみても、見栄えに大きな違いがなかった。

「生地が違うんでモノは違いますよ。でもネットショップだと写真でしょ。それに、オリジナルとしてのインパクトがなさ過ぎる。」

 

困っていたところに、ポツンと言った職人のひと言が運命を変えた。

「これ同色の糸だけを集めて編むの面倒くさいよね。ミックスしちゃわない?」

試しに糸を混ぜ合わせて編んでみると、そのとき限りの色合いの、他にはないオリジナル性のあるものが出来上がった。

 

「それで、ようやく青森の商品と全く違うものが出来た。これを『メリヤス草履』として、スタートしたんです。」

こうして世界にひとつだけのメリヤス草履が生まれ、ネットで販売するとあっという間に完売となった。

しかし、メリヤス草履は青森の職人さんたちの手作りだ。毎月作れる数は五十足が限度だった。

 

-見えないものへ可能性を懸ける

数は多くは作れないが、納得の商品が出来あがった。次にこれをビジネスとして続けていくのに必要なものはブランディングだ。価値あるものの良さを最大限に伝える事ができれば、価格の勝負が出来るからだ。

そこで、草履というものから“ルームシューズ”つまりインテリア・リビング雑貨の一部としてインパクトのある商品を目指した。

 

「パンフレットとかロゴとかコンセプトとか。そういう、目に見えないものには全くお金払いたくなかったんですけど。モノづくりやっている人って、みんなそうだと思うんです。ホームページだって、映像だって高いでしょ?でもやるしかないと思ったんです。」

 

そうして出来あがったのが、北欧をイメージした『MERI』だ。カラフルな色合いとモチーフが目を惹く。草履の言葉のイメージからの一新だった。

 

「実はMERIってブランド名、一番はじめに却下したんです。だってメリヤス編からの発想で単純でしょ。でも、“メリヤス”というもう聞かなくなってしまった言葉をどこかに残したいよねということで、やっぱりMERIかなぁって決まったんですよ。」

メリヤスの言葉を残したい気持ち。

それは青森の職人さん達の暮らす、あの美しい雪景色を残したいという気持ちと重なった。

 

-愛編む 人の心に届くもの

小高社長は、墨田区観光協会が主催し、弊社代表 榎田竜路が主任講師を務める「まち映像プロデューサー」講座の第一期卒業生でもある。全国の講座受講生の中でも、最も精力的に映像発信をしている一人だ。小高社長のYouTubeにアップしている映像作品は、自社・他社の紹介を含めなんと三百を越える。講座で一番学んだこと、それは「伝えるのではなく伝わること。」だという。

 

「上手く伝えるんじゃなくて、伝わるような。何をやっても、その背景には嘘がないから。じわじわじわじわと映像を通して皆さんの心に入っていって、それが一人歩きしているというのが自然かな。いいモノ作りをしている、それは誰にも負けないものですから。」

 

講座では、自社の映像ではなく必ず他社の映像を制作する。それは自身ではなかなか気付けない魅力を引き出すことを学ぶためだ。

 

「人のものを撮ってると、愛情が出てくるじゃないですか。こういうところスゴいなぁって、伝えてあげたいなぁとか。だけど相手はその魅力に全然気付いてない。そのまどろっこしさを、フィルターを通して伝えるというか。それが映像って面白いんです。」

 

小高社長の作った映像は、そこに映る人の人柄が伝わってくる。

「映画学校通った人とかに、映像の技術で言ったら絶対に勝てる訳ないんだもん。でも僕たちができるのは、自分たちがモノづくりをやっている視点でインタビューして、言葉や笑顔を引き出したりだとか、想いを語ってもらえる。自分たちにとっての日常が、外に出ればスゴい事なんだよって伝えられるんです。」

 

展示会場のディスプレー映像に映し出されていたMERIの職人さんの、はにかんだ笑顔と青森の風景を思い出す。

小高莫大小の商品は手にすると、どれも不思議に温かい気持ちになる。

それは、作ってくれる職人さんの愛情。商品への愛情。手にとるお客さまへの愛情がたくさん詰っているからだろう。 

(小高 朋子)