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 福岡県八女市。自然に恵まれたその土地に、フローラ美工はある。
 ベチバーとの出会いは、車の販売に係る多くの方々からの相談だった。「中古車の車内についた煙草やペットなどの臭いって何とかなりませんかね」。普通ならそこで、香水や市販の匂い消しを提案するところだが、社長の渡邉妙子さんは「匂いを匂いで被せるのではなくもっと自然な、安全性の高い消臭剤は作れないものか」と、思いを巡らせた。偶然、テレビで放送されていたベチバーが目に留まった。「これだ。これで消臭剤が作れる」と閃めいたという。
 さっそく、それを販売している所を探した。近くの久留米にあることが分かった。訪ねてみると、ベチバーは輸入しているけれど、販路を思うように広げることができず、伸び悩んでいた。そこで、一部を買い取り、成分抽出を試みた。消臭剤づくりの始まりだったが、なかなか思うようには進まなかった。

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 実は妙子さんの家庭は、植物とは縁が深かった。山の中を庭のように走りまわり自由に遊んで育った祖母は大の植物好きで、日常生活の中にドクダミを煎じて湿疹に使ったり、日常ハブ茶を飲んだりと、健康管理にもごく自然に植物をつかっていた。生け花「嵯峨御流」の師範でもある妙子さんがベチバーとの出会いに心惹かれるものを感じたのも、そういった日常の背景があったからだろう。
 妙子さんの娘さんもいつの間にか植物療法の世界に足を踏み入れていた。その効能を自らが実感する中で、ハーブが心身の良きパートナーだと確信を持ち、実家のベチバーの取り組みにも、専門家として様々なアドバイスができるようになっていた。

 

 さて、問題の抽出だが、初めは鍋で煮出して成分を抽出する、という原始的な方法だった。そのため、製品化するには決して精度が高いとは言えない代物だった。
 「これではだめだ」。もう少し良い商品にしなければと、蒸留器を購入した。研究を重ねた末、ベチバーの根の部分を蒸留し、100%植物由来で無添加の消臭液等の製品が誕生した。

 

 2012年7月、九州北部豪雨災害により、八女市星野村は甚大な被害を受けた。沖縄では土壌流出防止に、強靭な根を持つベチバーを植える取り組みがあるのを参考にし、村の弱い斜面や休耕地にベチバーを植え始めた。コンクリートで固めてしまう法面固定から、自然界の植物の力を借りようという試みだった。災害後の恵まれているとは言えない環境下でも、生命力の強いベチバーは適応が可能だ。
 八女といえば、茶の産地として知られているが、高齢化や人口減少とともに、茶畑の手入れができなくなり、耕作放棄地が目につくようになっていた。その土地もなんとか利用できないか。翌13年7月には、星野村高木農園におけるベチバー栽培と、フローラ美工による加工商品化が国の農商工等連携事業に選ばれた。以来、100%植物由来・無添加にこだわった消臭スプレーなど、安全・快適・健康な暮らしをテーマにした商品開発を進めている。

 

 「地域のみんなで助け合って自然とまっすぐに向き合い、万物に感謝しながら生きる」。実は、村にはそんな古き良き日本の暮らしが残されている。そんな暮らしを未来につなげていきたい。将来は、岩戸山や古墳の多く残る、ここ八女の地で森林セラピーの基地であることも活かし、歴史の面白さや植物療法で観光に結び付けたい。そして、多くの人に古き良き里山の暮らしを心身ともに体感してもらえたらと考えている。

 

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 福岡県八女市。自然に恵まれたその土地に、フローラ美工はある。  ベチバーとの出会いは、車の販売に係る多くの方々からの相談だった。「中古車の車内についた煙草やペットなどの臭いって何とかなりませんかね」。普通ならそこで、香水や市販の匂い消しを提案するところだが、社長の渡邉妙子さんは「匂いを匂いで被せるのではなくもっと自然な、安全性の高い消臭剤は作れないものか」と、思いを巡らせた。偶然、テレビで放送されていたベチバーが目に留まった。「これだ。これで消臭剤が作れる」と閃めいたという。  さっそく、それを販売している所を探した。近くの久留米にあることが分かった。訪ねてみると、ベチバーは輸入しているけれど、販路を思うように広げることができず、伸び悩んでいた。そこで、一部を買い取り、成分抽出を試みた。消臭剤づくりの始まりだったが、なかなか思うようには進まなかった。    実は妙子さんの家庭は、植物とは縁が深かった。山の中を庭のように走りまわり自由に遊んで育った祖母は大の植物好きで、日常生活の中にドクダミを煎じて湿疹に使ったり、日常ハブ茶を飲んだりと、健康管理にもごく自然に植物をつかっていた。生け花「嵯峨御流」の師範でもある妙子さんがベチバーとの出会いに心惹かれるものを感じたのも、そういった日常の背景があったからだろう。  妙子さんの娘さんもいつの間にか植物療法の世界に足を踏み入れていた。その効能を自らが実感する中で、ハーブが心身の良きパートナーだと確信を持ち、実家のベチバーの取り組みにも、専門家として様々なアドバイスができるようになっていた。     さて、問題の抽出だが、初めは鍋で煮出して成分を抽出する、という原始的な方法だった。そのため、製品化するには決して精度が高いとは言えない代物だった。  「これではだめだ」。もう少し良い商品にしなければと、蒸留器を購入した。研究を重ねた末、ベチバーの根の部分を蒸留し、100%植物由来で無添加の消臭液等の製品が誕生した。     2012年7月、九州北部豪雨災害により、八女市星野村は甚大な被害を受けた。沖縄では土壌流出防止に、強靭な根を持つベチバーを植える取り組みがあるのを参考にし、村の弱い斜面や休耕地にベチバーを植え始めた。コンクリートで固めてしまう法面固定から、自然界の植物の力を借りようという試みだった。災害後の恵まれているとは言えない環境下でも、生命力の強いベチバーは適応が可能だ。  八女といえば、茶の産地として知られているが、高齢化や人口減少とともに、茶畑の手入れができなくなり、耕作放棄地が目につくようになっていた。その土地もなんとか利用できないか。翌13年7月には、星野村高木農園におけるベチバー栽培と、フローラ美工による加工商品化が国の農商工等連携事業に選ばれた。以来、100%植物由来・無添加にこだわった消臭スプレーなど、安全・快適・健康な暮らしをテーマにした商品開発を進めている。     「地域のみんなで助け合って自然とまっすぐに向き合い、万物に感謝しながら生きる」。実は、村にはそんな古き良き日本の暮らしが残されている。そんな暮らしを未来につなげていきたい。将来は、岩戸山や古墳の多く残る、ここ八女の地で森林セラピーの基地であることも活かし、歴史の面白さや植物療法で観光に結び付けたい。そして、多くの人に古き良き里山の暮らしを心身ともに体感してもらえたらと考えている。