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児童館。誰もが耳にしたことがある、あるいはお世話になったという方もいるだろう。しかし、具体的に何のために、どんな目的でできた場所であるかまでは思いを巡らせる機会は少ない。児童館とは、児童福祉法第四〇条による児童福祉施設であり、子どもが健全な遊びを通じ心身の健康を増進し情操を豊かにすることを目的としている。そして、そんな『遊び』という学びの場から自立を促すことが期待されている。 「まちづくりNPOうらそえ」という民間団体が運営する、沖縄県の「浦添市立森の子児童センター」。〇歳から一八歳までの子どもたちが利用している。

ここの館長、大城喜江子さんの話から、児童館の役割や重要性が見えて来た。

「私たちはどちらかというと、福祉と教育の融合と思ってますので、子どもたちは遊びでいいんですけども、うちの職員はそこに教育的な意味合いをどう盛り込んで運営するかというのを考えているんですね。子どもの見える課題からいろんな事業に取り組んでいます。」

子どもたちから見えてくる課題、まず真っ先に目に入ったのは、学習が充実していない子どもたちの存在だった。

 

「素行不良の子たちとかですね、手のかかる子どもたちが、うちにいっぱい来るんですね。うちはオールオッケーにしてるので、どんな子も引き受けるという風にして、はじき出さないんです。『投げない、捨てない、投げ出さない』っていうのを私たちの信条にして、子どもたちに関わる。そんな子たちにうちの職員が『高校どうするの?』って聞いたら『行きたい』と言うんです。成績も悪すぎて行くところがないと言われてる子どもたちなんですけど、でも本当に行きたいというのがすごく私たちにも伝わったので『わかった、教える人探す。ノートも鉛筆も何もかも全部揃える』と。予算ないんですよ。ないんですけど、全部揃えると言って。こっちも本気ですよ。子どもたちも本気で向かってきてるんでね。それでノートも鉛筆も全部揃えて、ボランティアも探して、そこで学習支援を始めたんですね。そうするとですね、もうひどい格好ですよ、学校じゃ絶対指導されるっていう。足は伸ばす、寝てる…なんですけど、この子たちにとっては勉強をするという行為が大事。寝ようが何しようが、規律は後し。学校と同じことをしたら結局もっと居場所がなくなる。学校が悪いってことじゃないんですよ。学校は学校のあり方があるので。
ただ、ここはとりあえず来るという、勉強をするという行為だけでも、そこから始めていかないとっていうのがあってやりました。」

そこから新たな課題が見えてきた。 
「お菓子を頻繁にもって夕飯にするもんだから、ちょっとおかしいよねと。
それで食事を始めたんです。そうしたらやっぱりちゃんと食べるんですよ。
でもそのときも予算があるわけではないので、空き缶とかダンボールを売るのと、あと私とうちの職員とちょっと出したりしながらの食事支援。それを企業の方が聞きつけてくださって、商品券をいただいて。」

 

必要な課題に対してどうニーズをサービスしていくか、そこに重点を置き、学習支援と食事支援を始めた。
そして大城さんが何より児童館でやるべき、児童館だからこそできることだと感じていたのが『キャリア教育』である。

 

「私は社会教育畑からやってきたので、学校教育との違いがあると思うんですね。カリキュラムはないんですけれど、社会に出るときに何が必要なのって前提でいろんなことに取り組んでいく。なので、言葉を使うにしても、例えば窓口で子どもたちが『先生ボール』と言いますけど、それでは世の中通じないんです。『ボール食べるの?飲むの?何するの?ボールだけではわからないし、先生はボールじゃないし』というのを言っていくと子どもたちが『ボール貸して』って言うから、『貸してではちょっと通らないよね』って言って。『貸してください』まで言えるようになるところまでやりとりする。小さなことですけど、そこを丁寧にしていかないと気づかないんですね。なので相手が気づくための、こちら側の言葉の発信を、やっぱりしっかりやっていくっていうのが大事かなと思うんですね。私がくる前は『先生ボール』って言ったら、要約されてるから、ボールを渡していたようですけど、それではなくて、やっぱりちゃんと伝えないとコミュニケーションになっていかないっていうのを、やっぱり丁寧に丁寧に大事にしていくと。」

児童館と学校の違い。その違いを上手に生かし、子どもたちと接することが大事だと言う。
「知識と知恵をバランスよく作っていく大事さがあるのではないかと思っています。社会教育的な基本というのは、私は、相手の気づきかなと思うんですね。なので、学校が知識の部分を子どもたちに教えるのであれば、児童館の私たちは体験のところで知恵をつけていく。なので学校と違う。私たちは「指導」ということではないんです。まずは受け入れて、それから少しずつ、気づきをもって整えていくというような感じにもっていくことの方がいいかなと。気づいて自分のものにしたら抜けない、身についているので。身体がわかっていることなので。やっぱり、その『身体ごとわかる』っていう充実感がストーンとお腹の中に落ちていって。「わかった!」のあのお腹がいっぱいになるようなね、気持ちいいんじゃないかと思うんですよね。」

 まずは受け入れること、そこから次へのステップアップへと繋がっていく。『問題児』というレッテルを貼られてしまう子どもたちにも、しかるべき背景があるという。

「そういう子どもたちの背景を見たら、母子家庭であったり父子家庭であったり、なんらかの事情がある。なので私がやるのは、ソーシャルワーク的な視点で、子どもの背景も含めて関わる。毎日来る子であっても、やっぱり色々あるんですね。いいときも悪いときも。なんでこんな乱暴なことするんだろうというときには、やっぱりなんらかの問題があるわけです。みんなと違う特別扱いを、一時でもいいからされたい何かがあるんですよね。見て欲しい、関わってほしい、気にしてほしい。それが、大暴れするとか暴言を吐くとか、喧嘩をするとかっていう、なんらかの身体表現となる。」

 

そして、児童館だからこそ、そうした子どもの事情に沿った臨機応変な対応が可能となる。

 

「何があるかな?を、相談という形ではなくて、何か一緒にやりながら。そのときにぽろっと漏らしたりするので、こういうことがあるから今荒れているんだなというのがわかったら、一時だけ特別扱いする。それ大事なんですよ。」

大城さんがこのように子どもたちのサポートを充実させるに至った経緯、それは過去の経験に基づいている。

 

大城さんはここに来る前、働くことに対し悩みを抱える若者に対し、就労に向けた支援を行う「地域若者サポートステーション(サポステ)」を運営していた。

「一五歳以上三九歳までの自立支援なんですよ、ニート、引きこもりのね。でも一五歳じゃもう遅いの。そこに税金がいっぱい投与されるんです。人って一〇年二〇年引きこもったらね、回復するのに大変。おまけに精神病んだりします。そんな風にして精神病むまで人を放っておいたらどうなるかっていうと、税金だけがかかるわけ。忘れられている、孤立している、生きる意味がわからない、もう病気だけにしかならないでしょって。せっかく生まれて来たのに、こんな不必要な苦しみって味わう必要ないと思うんですよね。だったら早い段階でっていうことで、児童館ですよ!」
その想いが今現在の活動につながっている。
「なので、そこからしっかりソーシャルワーク的な視点を持って子どもたちに関わっていって、小中高繋いだ自立支援につないでいくっていうのは、どうしたってキャリア教育まで必要。人にいっぱい入ってもらって、いろんな大人たちを子どもたちに見てもらう、触れ合ってもらう。なので、いろんな事業をして、いい人たちに触れ合ってもらって、自分ってよくしてもらったよねとかね、大切にしてもらったという感覚を持ってもらうといいと思うので。」

今後の日本を担う、次世代という名の、未来の種。その種をいかに綺麗に花咲かせるか。そんな意義深い存在である児童館、そして大城さんの活動が、今後の日本を作っていくのに欠かせない存在である。
 「教育」というものの、本来あるべき姿が、ここにある。

vol.21-img01   児童館。誰もが耳にしたことがある、あるいはお世話になったという方もいるだろう。しかし、具体的に何のために、どんな目的でできた場所であるかまでは思いを巡らせる機会は少ない。児童館とは、児童福祉法第四〇条による児童福祉施設であり、子どもが健全な遊びを通じ心身の健康を増進し情操を豊かにすることを目的としている。そして、そんな『遊び』という学びの場から自立を促すことが期待されている。 「まちづくりNPOうらそえ」という民間団体が運営する、沖縄県の「浦添市立森の子児童センター」。〇歳から一八歳までの子どもたちが利用している。 ここの館長、大城喜江子さんの話から、児童館の役割や重要性が見えて来た。 「私たちはどちらかというと、福祉と教育の融合と思ってますので、子どもたちは遊びでいいんですけども、うちの職員はそこに教育的な意味合いをどう盛り込んで運営するかというのを考えているんですね。子どもの見える課題からいろんな事業に取り組んでいます。」 子どもたちから見えてくる課題、まず真っ先に目に入ったのは、学習が充実していない子どもたちの存在だった。   「素行不良の子たちとかですね、手のかかる子どもたちが、うちにいっぱい来るんですね。うちはオールオッケーにしてるので、どんな子も引き受けるという風にして、はじき出さないんです。『投げない、捨てない、投げ出さない』っていうのを私たちの信条にして、子どもたちに関わる。そんな子たちにうちの職員が『高校どうするの?』って聞いたら『行きたい』と言うんです。成績も悪すぎて行くところがないと言われてる子どもたちなんですけど、でも本当に行きたいというのがすごく私たちにも伝わったので『わかった、教える人探す。ノートも鉛筆も何もかも全部揃える』と。予算ないんですよ。ないんですけど、全部揃えると言って。こっちも本気ですよ。子どもたちも本気で向かってきてるんでね。それでノートも鉛筆も全部揃えて、ボランティアも探して、そこで学習支援を始めたんですね。そうするとですね、もうひどい格好ですよ、学校じゃ絶対指導されるっていう。足は伸ばす、寝てる…なんですけど、この子たちにとっては勉強をするという行為が大事。寝ようが何しようが、規律は後し。学校と同じことをしたら結局もっと居場所がなくなる。学校が悪いってことじゃないんですよ。学校は学校のあり方があるので。 ただ、ここはとりあえず来るという、勉強をするという行為だけでも、そこから始めていかないとっていうのがあってやりました。」 そこから新たな課題が見えてきた。  「お菓子を頻繁にもって夕飯にするもんだから、ちょっとおかしいよねと。 それで食事を始めたんです。そうしたらやっぱりちゃんと食べるんですよ。 でもそのときも予算があるわけではないので、空き缶とかダンボールを売るのと、あと私とうちの職員とちょっと出したりしながらの食事支援。それを企業の方が聞きつけてくださって、商品券をいただいて。」   必要な課題に対してどうニーズをサービスしていくか、そこに重点を置き、学習支援と食事支援を始めた。 そして大城さんが何より児童館でやるべき、児童館だからこそできることだと感じていたのが『キャリア教育』である。   「私は社会教育畑からやってきたので、学校教育との違いがあると思うんですね。カリキュラムはないんですけれど、社会に出るときに何が必要なのって前提でいろんなことに取り組んでいく。なので、言葉を使うにしても、例えば窓口で子どもたちが『先生ボール』と言いますけど、それでは世の中通じないんです。『ボール食べるの?飲むの?何するの?ボールだけではわからないし、先生はボールじゃないし』というのを言っていくと子どもたちが『ボール貸して』って言うから、『貸してではちょっと通らないよね』って言って。『貸してください』まで言えるようになるところまでやりとりする。小さなことですけど、そこを丁寧にしていかないと気づかないんですね。なので相手が気づくための、こちら側の言葉の発信を、やっぱりしっかりやっていくっていうのが大事かなと思うんですね。私がくる前は『先生ボール』って言ったら、要約されてるから、ボールを渡していたようですけど、それではなくて、やっぱりちゃんと伝えないとコミュニケーションになっていかないっていうのを、やっぱり丁寧に丁寧に大事にしていくと。」 児童館と学校の違い。その違いを上手に生かし、子どもたちと接することが大事だと言う。 「知識と知恵をバランスよく作っていく大事さがあるのではないかと思っています。社会教育的な基本というのは、私は、相手の気づきかなと思うんですね。なので、学校が知識の部分を子どもたちに教えるのであれば、児童館の私たちは体験のところで知恵をつけていく。なので学校と違う。私たちは「指導」ということではないんです。まずは受け入れて、それから少しずつ、気づきをもって整えていくというような感じにもっていくことの方がいいかなと。気づいて自分のものにしたら抜けない、身についているので。身体がわかっていることなので。やっぱり、その『身体ごとわかる』っていう充実感がストーンとお腹の中に落ちていって。「わかった!」のあのお腹がいっぱいになるようなね、気持ちいいんじゃないかと思うんですよね。」  まずは受け入れること、そこから次へのステップアップへと繋がっていく。『問題児』というレッテルを貼られてしまう子どもたちにも、しかるべき背景があるという。 「そういう子どもたちの背景を見たら、母子家庭であったり父子家庭であったり、なんらかの事情がある。なので私がやるのは、ソーシャルワーク的な視点で、子どもの背景も含めて関わる。毎日来る子であっても、やっぱり色々あるんですね。いいときも悪いときも。なんでこんな乱暴なことするんだろうというときには、やっぱりなんらかの問題があるわけです。みんなと違う特別扱いを、一時でもいいからされたい何かがあるんですよね。見て欲しい、関わってほしい、気にしてほしい。それが、大暴れするとか暴言を吐くとか、喧嘩をするとかっていう、なんらかの身体表現となる。」   そして、児童館だからこそ、そうした子どもの事情に沿った臨機応変な対応が可能となる。   「何があるかな?を、相談という形ではなくて、何か一緒にやりながら。そのときにぽろっと漏らしたりするので、こういうことがあるから今荒れているんだなというのがわかったら、一時だけ特別扱いする。それ大事なんですよ。」 大城さんがこのように子どもたちのサポートを充実させるに至った経緯、それは過去の経験に基づいている。   大城さんはここに来る前、働くことに対し悩みを抱える若者に対し、就労に向けた支援を行う「地域若者サポートステーション(サポステ)」を運営していた。 「一五歳以上三九歳までの自立支援なんですよ、ニート、引きこもりのね。でも一五歳じゃもう遅いの。そこに税金がいっぱい投与されるんです。人って一〇年二〇年引きこもったらね、回復するのに大変。おまけに精神病んだりします。そんな風にして精神病むまで人を放っておいたらどうなるかっていうと、税金だけがかかるわけ。忘れられている、孤立している、生きる意味がわからない、もう病気だけにしかならないでしょって。せっかく生まれて来たのに、こんな不必要な苦しみって味わう必要ないと思うんですよね。だったら早い段階でっていうことで、児童館ですよ!」 その想いが今現在の活動につながっている。 「なので、そこからしっかりソーシャルワーク的な視点を持って子どもたちに関わっていって、小中高繋いだ自立支援につないでいくっていうのは、どうしたってキャリア教育まで必要。人にいっぱい入ってもらって、いろんな大人たちを子どもたちに見てもらう、触れ合ってもらう。なので、いろんな事業をして、いい人たちに触れ合ってもらって、自分ってよくしてもらったよねとかね、大切にしてもらったという感覚を持ってもらうといいと思うので。」 今後の日本を担う、次世代という名の、未来の種。その種をいかに綺麗に花咲かせるか。そんな意義深い存在である児童館、そして大城さんの活動が、今後の日本を作っていくのに欠かせない存在である。  「教育」というものの、本来あるべき姿が、ここにある。